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慢性胃炎の治療法

久しぶりに今日は一般的な疾患についてお話ししたいと思います。その疾患とは・・・胃炎です。本当にありふれていますよね(笑)この胃炎、食べ過ぎなどで一時的にお腹がもたれたりすることはおそらく多くの方が経験していると思います。一過性のものであれば一般的な胃薬を飲んでおけばそれで大体良くなると思いますが、頻繁に症状が出てくる慢性胃炎になると少し話が違ってきます。さて、何が違うかわかりますか?

暴飲暴食などで一時的に胃の症状が出る場合は漢方的にみて基本的に胃は元気なのです。消化の力もしっかりあるのですが、それ以上に食べ過ぎて消化に負担がかかるために対応しきれず症状が出てきます。その場合は薬で少し助けてしっかり消化できれば元通り元気になります。

しかし慢性胃炎の場合は違います。慢性胃炎で当院に受診される方は数年以上胃の不快感に悩まされている方が少なくありません。そういう方は漢方的にみて胃がかなり弱っていて普通に消化することが出来ません。そして胃酸を抑えるような西洋薬ではこの弱った状態を改善することは基本的に出来ません。ですからなかなか治らない、ということになります。ではこれに対して漢方ではどう対処するのでしょうか。まず重要なことはまともに消化できなくなっているのでなるべくしっかり消化を助けることです。漢方薬には消化を助ける薬がいろいろありますが、そういった薬をうまく調整してしっかり効かすことが必要です。それでなんとか人並みよりやや低めぐらいの消化力に改善します。でもそれでもまだ十分ではありませんので消化に負担のかからない軽めの食事にしてもらいます。そうすることで消化力と食事のバランスが取れて症状が出なくなります。

長年症状が出ていた人もこれでいったん症状はかなり落ち着きますが、これはまだ治療の第一段階です。症状がなくなると皆さん、普通の食事を取りたくなります。ただでさえ胃が気になって食べたいものも我慢していたのですから良くなったら食べたくなる気持ちはわかります。しかし軽めの食事をすることでかろうじて消化力と食事のバランスが取れていたのが普通の食事に戻してしまうとまた症状がぶり返します。そうすると患者さんは慌てて食事を戻すのですが、この”症状のぶり返し”は実は非常に大きな問題なのです。

慢性胃炎について最初に「胃が弱っている」とお話しましたよね。これが根源なので根本的に治そうと思うと胃を元気にしなければいけません。胃の元気を出すためには例えば六君子湯という薬があります。この薬の主薬である人参は体全体もそうですが胃を元気にする働きがあります。ではこれを飲めば元気になるのかというと実際にはそうでもないのです。(漢方をそれなりに勉強している人でもこの事実を十分に理解していないことが少なからずあります)理論的には六君子湯で元気になるはずなのですがなぜ元気にならないかというと、先ほどの消化力と食事のバランスが崩れて症状が出ているときは胃を傷めているので胃が弱っていくからです。したがって六君子湯を飲んでいてもこれを繰り返すと根本的に元気にならないのです。

これでおわかりになるように慢性胃炎を根本的によくしようと思うと一定期間胃の症状が出ない状態を作る必要があります。しかし胃が非常に弱っている人は薬だけでこの状態を作り出すことはほぼ無理です(たとえば薬を飲んでいてもケーキを食べるとまた胃もたれが出てきます)ですから薬を飲み始めていったん良くなっても、それで満足せずに引き続き食事を制限していくことが必要で、そうすることで胃に過度な負担がかからない状態を維持できればだんだん胃が元気になっていきます。先ほどの人参もそういう場合にのみ有効になってきます。そして胃が元気になれば普通の人のように食べれる日がまたきます。しかしそれには通常半年から一年程度の治療が必要になってきます。