先日バセドウ病の漢方治療を希望されて受診された患者さんがいました。一般的にバセドウ病に漢方が効くとは思われていないので不思議に思って話を聞いていると甲状腺特集の本に漢方が効くという記事が載っていてそれを私が書いていたというのです。書いた覚えがなかったので一瞬びっくりしましたが、以前ある雑誌に書いた記事が別冊として出版された本に載っているようでした。
一般的にバセドウ病の漢方治療は難しいとされています。以前のブログでも書きましたが上海中医薬大学の内分泌外来を見学させて頂いた時ももっぱら西洋薬を使っていて、はなから漢方薬を使う気はないようでした。でも個人的な経験でいうと現在通院中の方でも完治に近い状態になっている方を含め改善している患者さんが数名いますし、過去には完治した患者さんもいます。あるバセドウの患者さんが「漢方で治療したい」と主治医に相談したら「漢方で治るわけがない」と相手にされなかったといっていましたが、別にその先生が悪いわけではなくそれが医学的にみて一般的な認識です。
このバセドウ病の漢方治療は私が専門としている火神派的な知識を利用していることが多いです。このあたりのことは専門家にとっても難しいところで、火神派の理解が深くない中医あるいは漢方医だと私が出している処方を見てもおそらく理解できないと思います。実際に台湾の病院で中医の外来を見学させてもらったお礼にバセドウ病の症例を提示して解説したのですが、部長の先生は終始怪訝な顔をされていました。
火神派についてはこれまで講演や勉強会をおこなってきた中で何度も話をしてきましたが、一般的な中医学の教科書にはほとんど記載がなく、また教科書の内容とは真逆なところもあるのでなかなか理解してもらえません。今野球のWBCをしていますが、火神派の理論は野球で例えるならバッターのアッパースイングのようなものです。従来日本の野球ではアッパースイングはよくないと言われ直されていました。しかし、メジャーで大活躍している大谷選手はアッパースイングでホームランを量産しているので、アッパースイングに対する批判も少なくなってきたように思います。火神派についてはまだまだそんな状況ではないのですが、今教えている獣医さんはみなさん熱心に話を聞いてくれていてとてもありがたいです。獣医の場合は漢方の勉強会が少なく他の先生の話を聞く機会があまりないのがいいのかもしれません(笑)
私は日々火神派の理論を用いてたくさんの患者さんを治療させていただいています。多くのケースはそれで良くなっていると思っていますので、もっと多くの漢方に携わる医療従事者に火神派の理論を理解してもらえたらと思っています。それがいつになるかはわかりませんが、自分なりに火神派についての情報発信もしていきたいと思っています。