先日漢方業界のある人から、「コロナ後遺症に対する漢方の臨床試験がいくつかおこなわれているが、結果は厳しそうだ」と聞きました。
ちょうどその直前にコロナ後遺症の新患の患者さんを診たのですが「別のクリニックで漢方を半年ほど服用したが効果がなかった」との話があり自分の中ではリンクする感じでした。
個人的な経験ではコロナ後遺症の患者さんに漢方を処方して大半の方は効果が出ていると感じています。話が矛盾するように思われるかもしれませんが私のクリニックと他の医療機関ではおそらく違う点、それも大きく違う点が一つあると思っています。それは薬の使い方です。先述した患者さんの処方記録を見せてもらいましたが、既製の分包品を通常通りの量で処方されています。一見するとなにも問題ないようですが、これだと後遺症に対しては薬の効果が弱くて重症であればまず改善は見込めないと思います。漢方薬は一般的に西洋薬に比べて効果がマイルドです。そしてコロナ後遺症は西洋医学的にみて難治ですが、東洋医学的にみても同様です。ですからしっかり効果が出るように漢方薬を工夫して調整する必要があります。コロナ後遺症の患者さんは漢方的にみてほぼ全員といっていいくらい血行が悪くなっています。ではそれに対して血行をよくする代表薬である桂枝茯苓丸を標準量の1回1包1日3回で服用すれば良くなるでしょうか。答えはおそらくほとんどのケースで良くならないと思います。残念ながら漢方を処方されているほとんどの先生がそのことに気づいてないのではないかと思います。さらに治療においてはいかに薬の効果を高めていくかというノウハウが欠かせませんが、これには高度に専門的な知識と経験が必要です。
というわけで、冒頭の話を聞いたとき”残念だけどしかたないな”と思ってしまいました。個人的には漢方は有効だと思っていますが、データ的に否定されるとなかなか信じてもらえなくなるのがつらいところです。
私はコロナ後遺症の患者さんを積極的に診ている先生を尊敬していますが、漢方を使う場合はもう少し工夫して患者さんのためにもよい結果を出していただけることを切に願っています。