今日のネットのニュースで劇症型溶血性レンサ球菌感染症での死者が今年既に250人を超えており、特に大阪で76人と最多になっていると知りました。大阪でこれだけ多いと人ごとではありません。たまたま昨日妻から、ネットで知っている人(兵庫県内在住)が発熱して42℃ある、と言われて「すぐ救急車呼んだ方がいい」と言ったのですが、その方も今日の時点で入院されて重症型の溶血性連鎖球菌感染症と診断されたようです。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症についてこちらのサイトを見てみますと、劇症型では初期症状としては、感染部位の強い痛みや腫れ、赤みのほか、発熱や寒気などかぜやインフルエンザに似た症状がみられ、その後は数十時間で症状が急激に進行し、皮膚や筋肉の壊死のほか呼吸困難や意識障害、多臓器不全などの重い症状を引き起こす、とされています。これから推測すると全体的には中医学的に温病といわれるものの範疇に入るように思いますが、初期はインフルエンザのように激しい悪寒に襲われる可能性があると思います。その時は標準的には傷寒論の麻黄湯を用いて温めてまずは寒気を飛ばす、という治療をおこないます。それですぐに治ればいいですが、重症型の場合はおそらくそれほどすっきり良くならず症状が変化することが考えられます。その次の状態は寒気がなくなり高熱が出てすごく熱がる状態です。これは傷寒論では陽明病、温病では気分証と言われる状態で白虎加人参湯が選択肢の一つになりますが、それだけでは不十分で、専門的に言うとより清熱去風を強める必要があります。さらに意識障害や手足の腫れ、血尿などが出てくるようですと温病の営分証、血分証に入っている可能性が高いです。その場合の薬は・・・一般的なエキス製剤で適切と思える物がすぐに浮かびません。個人的にはそれ用の薬を調合して用いると思います。また、感染部位が皮膚の場合は寒気がなくなればすぐに営分証に入っている可能性が高く、その場合は温清飲加減を用います。劇症型の場合非常に進行が早く、中医学的にみても時間単位で変化していく可能性が高いです。そのため必要に応じて数時間で薬を変えるということもあり得ます。漢方はゆっくり効くという概念があるかもしれませんが、急性の感染症の場合はもちろんそれでは意味がありませんし、本来はダイナミックに治療することもあります。
ここに書いたのはあくまでサイトの記事から推察した中医学的な治療法を簡単に述べたもので、実際にこのような治療法でうまくいくかどうかはやってみないとわかりません。しかし、コロナの時も流行する前から治療法を想定し、オンライン診療が特例として解禁になったときにコロナの患者だけを対象にオンライン診療を開始し、大体想定していた治療法でうまくいきました。ですので、この劇症型溶血性レンサ球菌感染症についても漢方を併用すると30%と言われる死亡率を下げられる可能性は十分にあると考えます。しかしながら、現在厚生省が定めているオンライン診療は急変や急性期の症状は対象としていませんので、現時点で当院では残念ながらそういった患者様を受け入れることが出来ない状況です。それにそういった患者様は基本的に入院になると思いますので、担当医となる医師が中医学的な知識を持って漢方薬も併用してもらえるといいいなと思います。