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NHKの漢方特集

先日あった番組なのですが、録画してあったので今日見ました。こういう番組があると患者さんも結構見ていると思えて、何人かの患者さんから番組の感想をお聞きしました。漢方だけでなく鍼やお灸、さらにはヨガまであってそれらがいろんな病気に効くという内容で、なかなか面白かったと思います。漢方や鍼はあまり知られていないだけで実際には良い効果を発揮する事が少なくありません。(治療者の腕にもよりますが・・・)あまり東洋医学を知らない人が見ると本当にそんなに効くのかな?という内容もあったと思いますが、私からすると特に驚くようなことはありませんでした。

例えばアフリカでお灸で結核を治した話がありましたが、私も実は漢方で改善した経験があります。その患者さんは長引く咳で当時私が漢方外来をしていた病院の内科を受診していたのですが、それでもなかなか治らないので漢方外来を受診されました。それでエキス剤を調合してお出しすると1、2ヶ月で咳はほぼ消失しました。その後内科の検査で結核菌がでたのですが、症状自体はもうその時には落ち着いていました。漢方をよく知らない人(医者も含めて)にこういう話をすると眉唾物に思われるのであまり話をすることはないのですが、実際には色々と良くなったりします。

あと六君子湯を服用させるとネズミの寿命が伸びるという実験結果が紹介されていました。六君子湯は漢方の中では代表的な胃腸薬です。なぜこれで寿命が伸びるのか。理屈としては六君子湯を服用することによってグレリンというホルモン物質が増強し、それによって細胞を各種のストレスから保護するサーチュイン遺伝子が活性化するからだそうです。(この話、講演会で何度も聴きました。)しかし、六君子湯は比較的シンプルな漢方薬で、六君子湯を含有するような漢方薬もあります。例えば六君子湯に元気を出すような黄耆や血行を良くする生薬が加わっていたらどうでしょう?さらに東洋医学では腎を補うものが寿命を伸ばすという考え方があります。それなら補腎のものを加えたら?私自身は東洋医学的な視点に立つとその方がより寿命を伸ばすと確信します。そしてそういう薬を日々よく処方しています。東洋医学はまだまだ科学的に解明されていないことの方が圧倒的に多く、もし六君子湯が本当に寿命を伸ばすのであれば、今後他の漢方薬についても同じようなエビデンスが出てくる可能性は極めて高いと考えています。ですから寿命に関しては六君子湯が特にいいとは思いませんし、本当に人間でエビデンスが出るのかまずは経過を見るのがいいと思います。