メニュー 閉じる

東洋医学の弁証は難しい

最近東洋医学系の人たちとの交流の中で弁証(診断)について考えさせられることがありました。東洋医学の弁証は西洋医学のように検査で数値で見えるものが基準になるわけではありません。脈の性状や舌の状態や問診を主に参考にして決定するのですが、脈の診察は診る人によってかなり違ってくることがありますし、なかなか客観的に再現性のある基準を作るのは難しい面があります。それに加えてベースにある中医理論が人によって少し違っていたりするので診察で同じ情報を得たとしても弁証が違ってくることもあります。

さらに今回感じたのは全体と部分の弁証です。東洋医学にはホリスティックな考え方があって部分の中に全体が反映されていると考えます。例えば脈を診れば五臓すべてがわかる、あるいは目を見れば五臓すべてがわかるという考え方、診断方法があります。そのような考え方から一つ弁証するとその状態が全身に及んでいると考えたりもします。例えば冷え性で陽虚と弁証するといろんな症状が冷えから来ていると考えるわけです。「冷えは万病の元」と言われるように確かにそのようなケースはあります。しかし、必ずしもそうではないのです。体は冷えていても胸焼けやゲップがよく出る人は胃熱といって胃に熱がこもっていることが少なくありません。その場合、胃の状態に絞っていろいろ質問して寒熱その他の状態を把握していきます。全体としては冷えている、例えば腰痛は温めると楽になるのであれば腰は冷えています。このように体全体、そして腰は冷えているけれども、胃は熱を持っているということがあるのです。ですので、全体を見て「この人は冷えがあるからそれを治療すれば大丈夫」というわけにはいかないのです。必ず、患者さんの症状が元々の体質やほかの症状の状態と中医学的に一致していて同じ原因から来ているのか、全く別の原因なのかを確認する必要があります。それをしないと弁証が全く違うものになってしまいます。先ほどの例でいうと冷え性なのに胃が熱を持つのはアルコールや脂っこいもの、甘いものなどをたくさん摂っているのが原因で、元々の体質とはまったく関係ないことが多いです。

それから、これは業界では言われることなのですが、「漢方は当てもの」という言葉があります。たとえば肩こりならまずAという薬、それでだめならB、それでもだめならCというふうに最初から治療方針をあらかじめ決めておく方法です。理論があまりないため「当てもの」といわれます。実際にこういう風に診療しているという話を最近耳にしました。東洋医学は本来オーダーメイド医療であり、それは患者さんの体の状態を把握して初めてできるものであり、それを無視してこのような治療をするのはかなり横暴だと思います。

思いつくまま書きましたが、東洋医学の弁証(診断)をするにはまずベースにしっかりとした理論体系をもち、そのうえで脈や舌などの診察や問診で患者さんの情報をたくさん集めます。そしてそれを全体と部分、あるいは各臓腑ごとにどうなのか整理していきます。この時に臓腑によって弁証が違えば複数の弁証が出てくることになります。(先ほどの例でいうと胃熱と腎陽虚)そうしてそれに対応する形で処方が決まります。このように東洋医学では一般的に西洋医学よりいろいろ考えた上で診断をつけることが多いです。頭は結構使います。