工場に到着すると副社長以下、勝昌の社員の方が温かく迎えてくれました。まず最初に勝昌製薬についてのビデオを見た後、生薬倉庫へ。
勝昌の特徴は全て無加工の生薬をこの倉庫に格納していることです。普通は中国などの現地で必要に応じて生薬を加工し、輸入します。しかしこのメーカーはそうではないのです。
入っていた生薬はまず品質のチェックを行います。もし会社の基準を満たしていないと判断されたら全て返品するそうです。チェックをクリアした生薬はこの工場で加工(修治)されることになりますが、今回はその修治の現場も見せていただきました。
まずは遠志です。これは不眠に効果のある生薬ですが、開竅作用と言って意識を覚醒させる作用があり、近年はこれが認知機能の改善に効果があるのではと注目されています。遠志は水に浸すと刺激性が緩和するのですが、これはそれを乾燥させているのだと思います。
これは陳皮を蒸しているところです。陳皮が黒いのと蒸気がすごいので何が何だかよくわかりませんが陳皮なのです(笑) 通常は密閉して蒸しているのですが、我々のために特別に開けて見せてくれました。
それからこれは甘草です。漢方薬によく含まれている生薬なのですが、普段見るものとは若干違っています。何が違っているかわかるでしょうか? この甘草、表面が少し白くてベタついていますよね。これ実は蜂蜜をまぶしているのです。それを炒めます。これを「蜜炒」と言います。甘草は一般的に諸薬の調和と言われます。しかし本当はそれ以外に色々と効能があります。甘草はその名の通り甘いのですが、甘いものは一番胃腸が喜ぶ味で気を補う働きがあるとされます。蜂蜜も同じく甘みが強いですよね。さらに甘草は炒めることで補気の作用が強まります。つまりこの「蜜炒」をすることで補気の作用がぐっと強まるのです。
例えば補中益気湯という元気を出す代表的な漢方薬にも甘草が含まれています。この場合、もうお分かりだと思いますがこの「蜜炒」の甘草を入れた方が薬の効果は高まります。台湾のメーカーはこういったことを基本に忠実に行なっているのです。本来は当たり前のことかもしれませんが、日本のメーカーはこういった修治を十分にできてない現状を考えると素晴らしいと思います。
ここでもう少し台湾製の漢方について補足すると、今回紹介しているようなメーカーは海外にも輸出しています。ということは国内のみならず各国の審査基準も満たさなければいけません。例えば残留農薬や重金属などの検査も当然必要になりますが、各国の基準を満たすためには日本国内のものよりも多くの検査項目をクリアしなければならなくなります。つまりそれだけ品質の安全性が担保されたものになります。これらの理由で個人的には台湾のエキス製剤は日本メーカーのものと比べてもその品質、安全性の面で決して劣っていないと考えています。