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中医学の極意

みなさん新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

さて、新年一発目から仰々しいタイトルをつけました。すごく期待を持たせるタイトルなんですが、これを読んでもすぐに中医学は上達しませんので、ご了承ください(笑)

昨年11月に患者さんから中医学の講義をしてほしいとのリクエストを受けました。しかし、今のところそれは考えていませんので、その代わりとして中医学を勉強するにあたって私がお伝えしたいことをここに書いてみたいと思います。

最近漢方がより広まってきて、それに伴い中医学を勉強している人も増えているように思います。一般の方でも少しかじっている人から本格的に専門の学校に通っている人までいます。専門家も医師、薬剤師から漢方アドバイザーや薬膳アドバイザーなど本当にたくさんいる時代になったなぁと感じます。それは大いに結構なのですが、そういった人達と私の中医学的診断(弁証)が違うことが多々あります。例えば普段私が治しているような症例でも全く違う診断、治療をしているようなケースに遭遇することがあります。そういう場合経験的に自分の方が正しいと確信するのですが、問題はなぜ同じ専門家なのにそれほどの違いが生じるかということなのです。例えば漢方の専門のスクールに通っている人は本場の中医師免許を持っている中国人から授業を受けている場合もあります。それだけお金も時間もかけて本格的に勉強すれば優れたものが身についていると自他共に考えると思いますが、私の印象ではそれは違います。非常に厳しい言い方になって申し訳ないのですが、ほとんどの場合、あまりいいものは身についていません。これはとても根が深い問題で今日はこれ以上お話ししませんが、専門の学校を出てもそれだけでは決していい中医になれないのです。なぜでしょうか?私が所属している研究会は教科書的な本を出版していますが、教科書が間違っているわけではありません。問題はその運用方法を大半の人が熟知していないことなのです。

例えば「寝汗」があるとします。「寝汗」は中医学の教科書には陰虚の症状としてよく出てきます。実際、陰虚の場合に寝汗をかくことはよくあるのでそれ自体間違ってはいません。しかし、「寝汗」は陰虚に特有の症状ではないのです。でもそこまで詳しく教科書には載っていないし、講師の先生も寝汗=陰虚のように説明するので、教えられた方はそのように覚えてしまいます。そして「寝汗」をかく患者さんをみると即座に陰虚と診断してしまうのです。

このようなことがなぜ起こるかというと患者さんの病態生理を十分に考えていないからです。もう少し言うとなぜ「寝汗」をかくのかということを中医学的に考えなければいけません。そして本当に陰虚以外に「寝汗」をかく病態はないのか?ここを突き詰めていく必要があるのです。でも大半の人はそれができておらず、単純な思考で弁証しています。そのために間違いが多く起こっています。

ですから中医学を勉強する人に私が言いたいのは以下のようなことです。定評のある教科書はどれも根本的に大きな違いはないので自分に合うと感じるものを選ぶと良いと思います。教科書の内容をマスターするのは実は中医学の基礎の基礎をマスターしたにすぎません。教科書で身につけた中医学的生理学の知識を応用して、自分や患者さんの症状をみるときに、単純に症状だけで判断するのではなく、どういった病態生理でその症状が出ているのかを深く考えることです。そのトレーニングが重要で、それを積んでいくことで初めて本物の「中医学的思考」が身についていくのです。