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西洋医が選ぶ漢方薬

先ほどたまたまテレビで漢方の特集をしているのを見ました。西洋医が評価している漢方のベスト3を紹介していましたが、1位から順に葛根湯、大建中湯、芍薬甘草湯でした。個人的なベスト3とは全然違いますが、知名度のある薬ばかりなので西洋医の先生ならこうなるのでしょうね。逆に私が選ぶのはマニアックなものばかりなのかもしれません(笑)

それぞれの薬について少しだけコメントしたいと思います。まず芍薬甘草湯ですが、これはこむら返りに効く薬としてとても有名です。ただこれで腰痛が治るかというとちょっと難しいと思います。効くケースもあると思いますが、そういった場合でも私なら別の漢方薬を使います。

大建中湯はお腹が冷えている時の腹痛に効くと説明していましたが、腹痛に効くのは一般的に大建中湯ではなく小建中湯です。小建中湯はざっくり説明すると桂枝湯の芍薬を増量したような薬で芍薬が腸管のぜん動を抑えて痛みを止めてくれます。これに対して大建中湯は山椒が主薬です。この山椒は日本のものではなく中国のそれで、麻婆豆腐に入っているあの痺れる辛さのものです。この山椒は腸管のぜん動を亢進させます。そのために日本では術後のイレウスと言って腸が動かなくなるのを予防するために非常によく使われています。これが腹痛に効くのはお腹が冷えて腸の動きが悪くなり、それによって詰まったような状態になって痛みが出る場合です。しかし腹痛が出る場合、胃腸炎のようにお腹がゴロゴロ鳴って痛む、ということが多いですよね。そんな時は小建中湯なのです。西洋医の先生は小建中湯をあまりご存知ないのかもしれませんが、ドクターだけでなく一般の方も大建中湯と合わせて小建中湯も覚えておくといいと思います。ちなみにこの二つをブレンドした中建中湯というのもあります。

葛根湯はテレビの解説の通り首や肩を温める作用があります。そして首を温めることは冷えに対して重要ではあるのですが、首を温めれば冷えが治るというものではありません。重要なのはやり首ではなくてお腹や下半身です。ここを温めるのが何より大事です。漢方的には表裏でいうと裏を温めるということになります。稀に頑固な冷えの方で理を温める薬だけでなかなか改善しない場合に、表を温める葛根湯のような薬を加えると効果的なケースがあります。しかし、一般的には冷えを葛根湯で取ろうと思わないほうがいいでしょう。