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新型肺炎の漢方治療について

新型肺炎については日本ではあまり知られていませんが、中国では約9割の患者さんに漢方薬が併用されていると言われています。そして中国では日本の厚生省にあたる衛生部が新型コロナウィルスに対する漢方治療のガイドラインを出しています。その中の代表的な処方として今回のコロナウィルス用に作られた清肺排毒湯というのがあります。

これを少し専門的にみてみたいと思います。構成生薬は麻黄 杏仁 石膏 甘草 桂枝 澤瀉 猪苓 白 朮  茯苓  柴胡  黄芩  半夏 生姜  紫菀  冬花  射干  細辛  山薬 枳実 陳皮 藿香となっています。これは既存の漢方を合わせたものがベースとなっていると思われます。具体的には以下のような感じです。

麻黄 杏仁 石膏 甘草=麻杏甘石湯

桂枝、澤瀉  猪苓 白 朮  茯苓=五苓散

柴胡  黄芩  半夏 生姜・・・小柴胡湯の主要生薬

紫菀  冬花  射干  細辛(麻黄 生姜 半夏)・・・射干麻黄湯の主要生薬

これでおわかりのように主に麻杏甘石湯+柴苓湯(五苓散と小柴胡湯の合剤)+射干麻黄湯で構成されていると考えられます。麻杏甘石湯と柴苓湯は保険用のものがありますが、射干麻黄湯はありません。この処方の特徴は紫菀  冬花  射干という3つの生薬ですが、これが含まれている医療用の漢方薬はありませんし、市販薬でもあまりなさそうです。それではどうすればよいかということになりますが、個人的には新型コロナウィルスにこれらの生薬が必ずしも必要とは思いません。むしろこれらよりも重要なのは一番最後にある藿香(かっこう)という生薬です。この生薬は化湿といって湿気を取る働きが強いのですが、化湿の働きがある生薬はいろいろありますが、藿香の代用となるものは実際の所なかなかありません。保険用の漢方で代用するなら茯苓飲合半夏厚朴湯あるいは平胃散というところになると思いますので、これを日本の保険薬で作ろうと思うと個人的には麻杏甘石湯+柴苓湯+茯苓飲合半夏厚朴湯になるように思います。ただし、ガイドラインに出てくる処方も他にもいろいろありますので、一概にこれがいいとは言い切れません。やはり漢方薬はその人の状態を診て処方を合わせることになります。

次に漢方薬の効果はどうかですが、これは金沢大学の小川先生が日本感染症学会に寄稿した

COVID-19感染症に対する漢方治療の考え方

に中西医結合(漢方と西洋薬の併用)の臨床観察研究のデータがあります。これによると52例のコロナ肺炎の患者を中西医結合34例、西洋薬のみ18例で比較しています。その結果臨床完治が中西医組94.1%、西医組61.1% 普通型から重症型への悪化が中西医組5.9%、西医組33.3%であり、また中西医組の方が臨床症状消失時間、平均入院日数が有意に短かったとされています。もちろんこのデータだけで全てを判断できるわけではありませんが、漢方薬が効く可能性を示唆するには十分なデータだと思いますし、とくに重症型への悪化を防ぐことに漢方薬が役立ってくれるのではないかと期待しています。

私自身は中国のガイドラインや現地の中医から頂いた情報、それに私自身の治療経験を合わせて新型コロナウィルス用の処方を用意しています。新型コロナウィルス陽性でご希望の方はご連絡下さい。