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漢方薬に対する認識がずいぶん変わってきています

現在コロナがまたはやってきて第8波と言われています。個人的にはこれまでもコロナの治療をしてきたので第8波が来ても特別な思いはありません。ですが、これまでとはちょっと状況が違ってきています。それは何かというと漢方薬が不足しているのです。これは中国の上海でロックダウンが起こったことでツムラの製造ラインに影響が出たことせいもありますが、もう一つの原因はコロナに漢方が普通に処方されるようになってきたからです。

2年前の5月にコロナの影響でオンライン診療が拡大されたときに当院ではコロナの患者に限定してオンライン診療を開始しました。当時はコロナに対する有効な治療法がありませんでしたが、私は漢方が効く可能性が高いと確信していましたので、他の内科医よりも手段を持っている自分がコロナの治療に対して積極的であるべきだと考えていました。ただ、当時はおそらく周囲の人間にもあまり理解されなかったと思います。また患者さんも漢方が効くなんて想像もしていたかったようで診察の依頼も非常に少ないものでした。日々コロナの報道がされる中で治療したくても治療できない悶々とした時期が長く続きました。その後ポツポツとコロナの治療依頼があり、それなりに経験させて頂いて漢方が効果的なこと、そしてどのように治療したらよいかも大体理解できたので徐々にコロナに対する関心は薄らいでいきました。

ところがここに来て葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏がコロナに有効といった報道が出たりして、一般的なドクターの漢方に対する認識が大きく変わり漢方がたくさん処方されるようになっているようです。古来からある漢方が未知のウィルスであったコロナにも対応できるという従来にはなかった認識が拡がっていくのは喜ばしく感じる一方、漢方が不足して専門家である自分が処方するのにも苦労する状況には正直困っています。通院中の患者様にはなるべくご迷惑がかからないように全力を挙げて漢方薬の確保に努めている状況です。

ちなみに葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏について少し説明します。元々柴葛解肌湯という処方があり、それが有効と考える先生方がいたのですがこれは医療用の製剤がありません。そこで柴葛解肌湯に近い薬として葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏を代用として臨床試験をおこなったという流れだと思います。それで有効だったと言うことだと思います。そうすると漢方に詳しくない先生方や患者さんはこの処方を求めてこれらがあっという間になくなる可能性があります。しかし中国や台湾では他の処方が有効とのデータもありますし、私個人の考えではもう少し別の処方の方がより効果的な可能性が高いです。漢方の組み合わせはほぼ無限にあり、効果的と思われる漢方薬は実はいろいろあると思います。その中で必ずしもベストな処方でなくても臨床試験でエビデンスが出るとその処方が全てのような流れになることが往々にしてあるのですが、個人的にはエビデンスベースの医学がもたらす弊害だと思っています。漢方は基本的にオーダーメイドであり、一口にコロナと言っても人によって使う薬が違ったり、また同じ人でも治療する時期が異なれば薬が変わってくることもあります。当院では当然ですが一人一人患者さんに合わせて薬を処方させて頂きます。

もし近くに漢方に詳しい先生がいない様な場合にはご自分で薬局で葛根湯や小柴胡湯加桔梗石膏を買って飲むということもあるかもしれません。その場合のアドバイスをすこし書きたいと思いますが、長くなってきたので続きは次回にしたいと思います。