昨日は、私の師匠の勉強会がありました。その中で、とても印象に残った話がありました。それは「虫垂炎も、状態によっては漢方でよくなることがある」という話です。師匠のご親戚が、あるとき虫垂炎になりました。病院を受診すると、「手術が必要です」と言われたそうです。そこで師匠に電話が入りました。直接診察できる距離ではなかったため、スマートフォンを使って血液検査の結果などを確認し、病状を詳しく聞いたうえで「この状態であれば漢方で対応できる可能性がある」と判断されたそうです。処方箋を書き、その日の午後には漢方薬を作ってもらい、まず2回服用。すると、翌朝には本人の体調がかなりよくなっていたとのことでした。病院の医師も、その変化に驚いていたそうです。最終的には病院から抗生物質も処方され、漢方薬と併用して治療を続けたところ、手術をすることなく回復したとのことでした。
こういう話を聞くと、改めて「漢方の効果は素晴らしいな」と思います。漢方というと、
「体質改善のために何か月も飲むもの」
「なんとなく調子を整えるもの」
というイメージを持っている方も少なくありません。しかし、本来の漢方には急性疾患を治療する体系もあります。『傷寒論』『金匱要略』を読めばわかるように、古代の医家たちは、発熱や腹痛、嘔吐、下痢など、今でいう急性疾患と日々向き合っていました。漢方は決して「ゆっくり効く薬」だけではないのです。
ただし、今回の症例については、もう一つ大切なことがあります。今回、師匠が行った治療は、一般的な漢方治療とはかなり異なる、特殊な治療法です。普通の漢方医が「虫垂炎ならこの処方を使おう」と考えて行うような治療ではありません。長年の臨床経験と深い中医学の知識をもとに、患者さんの病態を細かく見極め、その状態に合わせて選択された治療です。したがって、同じように虫垂炎と診断された患者さんに、一般的な漢方薬を飲ませれば同じように治る、という話では決してありませんので、一般の方はまねをしないようにお願い致します。
ただ漢方には、一般には知られていないような現代でも驚かされるような力があります。しかし、その力を引き出すためには、古典を学び、理論を理解し、長い臨床経験を積み重ねる必要があります。その中で良き師がいればその教えが大いなる進歩を促してくれるので本当に貴重なものになります。
私自身、師匠からかれこれ20年以上学んでいますが、それでも実際の症例を通して師匠の臨床の深さを改めて感じます。良き師から学び続けられることのありがたさを、今回も強く感じました。