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上海研修その2

2日目の研修は内分泌科の見学からです。今回見学させたいただいた上海中医薬大学の付属病院は1日の外来患者数が約8000人!、医師数約1000人という、日本では聞いたことがないような大きな病院です。中医学の病院ですが、西洋医学に準じていろんな科に分かれています。

内分泌科も教授の診察を見学する予定でしたが、直前で変更になり主任の先生の診療を見学することになりました。主任の先生は私よりも若い感じでフランスに2年間滞在した経験もお持ちで、とても紳士的な先生でした。患者さんは主に糖尿病、肥満症、甲状腺疾患の方でした。いろんな食養生の指導もしていましたが、処方については西洋薬が中心で、全く漢方を処方しないケースも3分の1ぐらいありました。

午後からは循環器の教授の診察を見学させていただきました。循環器の教授は年配の先生で老中医の風格があり、患者も半日で8人しか診ないそうで婦人科の教授とはすごい違いです(笑) 色々解説していただきこちらの質問にも答えていただきました。解説を聞いているとしっかりとした中医学のベースが根底にあることが言葉の端々から感じられました。ふと昔、師匠にも同じように詳しく症例を紐解いてもらったことを思い出しました。

今本場中国の中医学は弁証よりも弁病という考え方が主流になりつつあります。弁証というのは昔からの中医学の診断方法で、五臓を中心に診断していくものです。他方、弁病というのは西洋医学の病名を中心に考えていく方法で、たとえはアレルギー性鼻炎なら〇〇湯、蓄膿だったらXX湯みたいな感じです。実際にはこの処方をベースに弁証の考え方を加味して処方を少し調整しているケースが多かったように思います。そして年配の老中医の先生もやはりそうでした。

こういった事情は師匠から聞いてはいましたが、実際に自分の目で見て感じることができたのは貴重な経験でした。私自身は師匠から受け継いだ弁証中心のスタイルです。弁病の考え方も一部取り入れてはいます。これは特定の病気に特定の生薬が効くことが知られているものがあるからです。今回の研修で私のスタイルは中国ではやや時代遅れになっているという現実を知り、不思議な感じでした。おそらく70代以上の老中医は私と同じスタイルだと思いますし、私自身は今の所これを変える気はありません。でも日本はおろか、中国でも珍しいタイプになっていくのかもしれません。ともあれ、今回の研修は本場中国の中医学の実情を知ることができてとても有意義でした。このような機会を与えてくれた上海中医薬大学、及び研修をサポートしてくださった方々に深く感謝いたします。

今回の研修、実は台風の影響で行きも帰りも大変でしたが(行きは台風9号が上海にきました)また機会があれば海外に研修、視察にいきたいと思います。

(写真は黄帝内経に出てくる岐伯と黄帝の像)