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新型肺炎についての一考察

1.序説

 先日新型肺炎に対する漢方治療について知り合いの大阪のY先生と話をしていました。そのときに私が「武漢でこれだけ感染者が出ているのは漢方的に見て多湿の気候が影響しているのでは」とお伝えしたところ、武漢を始め現在新型肺炎の流行が確認されている地域の湿度を調べてくれました。それを見てわかったのは非常に湿度の高いところが多いということです。これは私の想像以上で大変興味深い発見ではないかと思います。またこれが新型肺炎の予防に役立つ可能性もあると思い、皆様にお知らせする次第です。

2.湿度が感染のリスクファクターであるという仮説

 まず武漢の気候ですが表1のようになっています。これをみると年間を通して平均相対湿度が70%以上あり、非常に多湿であることがわかります。

(表はすべてhttps://www.travel-zentech.jpより引用させていただいています)

表1

 次に2月6日で患者数が千人(1006人)を超えた浙江省の中でも特に患者が多い温州の湿度を見てみましょう。(表2)温州も年間を通じて平均相対湿度が非常に高く2月でも79%もあることがわかります。

表2

 では日本ではどうでしょうか。朝日新聞によりますと3月1日時点での都道府県別感染者数は北海道69人を筆頭に東京都35人、愛知県29人、神奈川県20人、千葉県12人・・・となっており、北海道は2番目に多い東京都の約倍になっています。また昨日(3月2日)は北海道の推計感染者が940人という報道がありました。日本の震源地は横浜のクルーズ船であろうと思いますが、そこからかなり離れた北海道でとくに感染が広がっています。その北海道の札幌の相対湿度が表3です。これをみると札幌も2月の平均相対湿度が69%で年間を通じても70%前後であり、以外にも高いことがわかります。

表3

 次に世界に目を向けると、いまや南極を除く五大陸に感染が拡大し、特にヨーロッパではイタリアで感染が広がり2月29日で感染者数が1000人を超え、患者数は中国、韓国に次いで3番目に多くなっています。特にロンバルディア州など北部3州で感染が広がっていますが、ロンバルディア州ミラノの気候が表4になります。

表4

 こちらも2月の平均相対湿度が78%と非常に高いことがわかります。

 最後に北京の平均相対湿度を見てみたいと思います。(表5)

表5

 これをみると北京の2月の平均相対湿度は43%とそれほど高くありません。ここで武漢と北京の患者数と死亡率を比較してみます。まず武漢では2月10日の報道で死者608人、死亡率4.06%となっています。(*)これに対して北京は2月28日時点で患者数411人、死者7人、死亡率約1.9%となっており、北京の方が患者数はもちろんですが、死亡率も低くなっています。(**)

 これらのことより新型肺炎の発生地である武漢をはじめとして患者数が多い地域は平均相対湿度が高いところが少なくないこと、また北京と武漢を比べると平均相対湿度の低い北京の方が患者数、死亡率ともに低いことから湿度が低い方が感染しにくい、そして重症化もしにくいのではないか、言い換えれば「湿度が感染のリスクファクターになる」という仮説が導き出されます。ちなみに感染拡大の舞台となった屋形船やクルーズ船も水上で湿度が高かった可能性があります。

 しかし、感染が広がっているすべての都市の湿度が高いわけではありません。韓国の大邱では宗教団体の集団感染が影響していると思われ、2月の平均相対湿度は50%台でそれほど高くありません。また今回引用しているデータは1986年から2015年までの30年間の平均であり、今年の平均相対湿度とずれがある可能性があります。

 このように仮説を立てる上で十分とはいえない点もありますが、新型肺炎が世界的に広がりを見せる緊急時で明らかに有効な治療法が確立されていない現在、この仮説が皆様に有益な情報になるかもしれないと考え、公開することにしました。

3.仮説に基づく対処法

 次にこれにもとづいた対処法を二つ提案したいと思います。

1)エアコンで除湿する

 職場や家庭の湿度はエアコンを使って人為的に下げることができます。ではどのくらいまで下げればよいのでしょうか。屋内の相対湿度の目安として建築物衛生法に40%以上70%以下という基準があります。なるべく下げたいところですが40%以下だとこの基準を下回りますし、インフルエンザ等他の呼吸器疾患にかかるリスクが高まる可能性もあります。従って40~50%が目標になるかと思います。

2)熱いものや辛いものを食べて発汗させる

 私の師匠の住む四川省成都はとても辛い四川料理が有名です。実際に現地で食べると日本で食べるそれとは比べものにならないくらい辛いです。なぜ成都ではそれほど辛い物を食べるのでしょうか。成都の気候はとても蒸し暑いです。ちなみに成都の平均相対湿度は表6にあるように5月を除いて80%を超えています。成都の中医(漢方医)は、辛いものを食べるのはこの蒸し暑い気候で体に入ってきた湿気を汗として発散させるための養生だといいます。私も湿度が高く体が重だるいときに辛いものを食べて発汗させることで体がすっきりと楽になったことが何度もあります。この方法は体に入った湿気(湿邪)を取り去るために東洋医学で昔から使われる方法の一つです。個人的にはエアコンの除湿よりもこちらの方が効果は強いと考えます。2日に1回程度、辛いものや鍋料理などの温かいものを家族みんなで食べるのがおすすめです。

 注意点としては汗をかきすぎるのはよくなく、じんわり汗ばむ程度がちょうどよいです。発汗が強くなってきたら服を一枚脱いで体温を調整しましょう。また、のぼせやほてり、胃炎や食道炎、皮膚の掻痒感や炎症を伴う疾患は温まると悪化する可能性があるので避けた方がよいでしょう。

表6

4.最後に

 繰り返しますが、「湿度が新型肺炎の感染のリスクファクターになる」というのは現段階であくまで仮説であり、証明されているわけではありません。従って対処法の効果も保証はできません。しかし、金銭的な負担はそれほどありませんし、特別なものも必要なく今日からでも手軽に開始することができます。

 これを読んでどう思うか、そして試してみる価値があるかどうかは皆様のご判断にお任せいたします。

 私自身はこの情報が皆様のお役に立つものであれば大変うれしく思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

引用サイト

(*) https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000175819.html

(**)http://www.xinhuanet.com/2020-02/29/c_1125644633.htm