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新型肺炎について思うこと

私の師匠は成都にいますが、成都の状況を伺うとかなり徹底した感染対策をしていて人々の移動も著しく制限されているようです。それに比べると日本のそれはかなり緩いですから、市中感染で感染者が増えてきてもおかしくない状況だと思います。皆さんかなり不安に思われているようで外来で新型肺炎のことを口にする患者さんも増えています。一部HIVの治療薬が有効との報道はありますが、有効な治療が確立されていない中で対処法がなければ怖いのも当然だと思います。

私自身も怖さが全くないとは言い切れないと思いますが、実はそれほど恐怖心は持っていません。なぜなら漢方薬が効く可能性があると考えているからです。SARSの時も中国では途中から治療チームに中医(漢方医)が入って死亡率が低下したデータがあります。そもそも漢方薬はインフルエンザの薬のように特定のウィルスに限って効くような性質のものではありません。ですから未知のウィルスであっても中医的に正しく弁証(診断)できれば治せる可能性があります。

SARSの場合は中医的に言うと「風熱」という範疇になり、それに対応する薬で効果を挙げたケースが多かったと思いますが、今回の新型肺炎は現在入手できている情報を総合的に考えると、SARSの時とは少しタイプが違うように思います。通常感染症で猛威を振るうようなタイプは中医学的には邪の毒性が強く、わかりやすく言えばとても強力なパワーを持っているので、感染後短期間で高熱などの非常に強い反応が現れます。ところが今回のコロナウィルスは微熱などの比較的軽い症状が1週間程度続いてから悪化するようです。HIVと同じ構造の遺伝子が入っていることが影響しているのかもしれませんが、こういった経過は明らかにインフルエンザとは違います。インフルエンザも風熱と弁証されることも少なくないですが、そういった風熱とは弁証も薬も少し違ってくる可能性が高いです。

「どういった漢方薬がいいのか?」という質問を受けることがありますが、実際の状態を診ているわけではないので、なんともお答えしようがありません。ただ、もし自分が治療するなら煎じ薬を選ぶと思うので(自分がかかったら絶対そうします)既製の薬とは少し違う形になるかもしれません。

いずれにせよ、うまく治療できれば漢方薬が効いてくれる可能性もあると思いますので、今回の新型肺炎で多くの死者が出ていることを非常に残念に思っています。患者さんのためには治療チームに漢方医を加えて、西洋医学と東洋医学を合わせて治療する形(これを中西医結合という)になればよりいいのではないか、と個人的には思っています。