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潰瘍性大腸炎の漢方治療

先日潰瘍性大腸炎のある患者さんが内視鏡検査の結果、「寛解といわれた」と教えてくれました。4年ほど前から当院で漢方治療も行っている方でここ最近は症状のない状態が続いていました。ですから調子がいいことはわかっていましたが、寛解と知ってうれしくなりました。潰瘍性大腸炎の患者さんは以前から治療してきていますが、数年前にアプローチの仕方を変えてから治療成績がよくなっていると思います。どこを変えたかというと主には疾患に対する漢方的な思考過程のことです。通常は”この病気だから”ということはあまり考えず、目の前の患者さんを診て問診その他から得られる情報を元に処方を組み立てます。しかし、この疾患については中医学的な特徴というのがあり、患者さんから直接得られる情報よりもこの特徴に沿った治療を考えることがポイントとなります。その意味では前回の発熱と逆のパターンとも言えます。こういったアプローチをとることはほとんどないのでそういう意味で私の中では特異な位置づけにある疾患です。

昨年受診されたある患者さんは初診時は下痢が1日4,5回あったのですが、漢方薬を飲み始めて一か月もたたないうちに1日1回の普通便になり、こちらも驚くほどの回復ぶりでした。通常ここまで期待するのは難しいとしても、経験的には漢方薬でかなりの確率で改善に導けると思います。

ちなみに漢方薬に使う青黛がこの疾患に有効とされており、当院の患者さんにも以前服していただいたことがあります。その経験からみても非常に有効な生薬であると思いますが、肺高血圧症の副作用報告が出ましたので現在は使用していません。青黛だけがこの疾患に特別に有効な生薬と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、この疾患に対する的確な中医理論を持っていれば青黛がなくてもそれと同等もしくはそれ以上の治療ができると思います。

ただ、難しいケースがあります。それは腸を切除しているケースです。この場合炎症よりも腸が短くなっていることで正常に消化吸収できなくなっていると思われることがあります。どれくらい腸を切除しているかにもよりますが、いずれにしても正常な状態に回復させるのは難しく、腸の大半を切除しているケースでは漢方薬の効果がほとんど期待できないこともあります。そもそも治療のターゲットである腸がないのですからしかたありません。ですから、できれば腸を切除する前に診せていただければと思っています。