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漢方薬の剤形について

今日は漢方薬の剤形についてお話ししたいと思います。現在一般的な漢方薬はエキス顆粒だと思います。ツムラ他各社から出ているもので水があればいつでも手軽に飲めるのが特徴です。このエキス剤はまず漢方薬を一度煎じてからさらに乾燥させてドライパウダーにします。それに賦形剤というものを混ぜてサラサラの顆粒に仕上げます。賦形剤はメーカーによって違いがあり、例えばツムラは乳糖など、そしてコタローはトウモロコシでんぷんなどです。この賦形剤の混ぜ方にも各社違いがあり、それによって顆粒の大きさや溶けやすさの違いがあるようです。エキス剤は飲みやすいですが、経験上煎じ薬と比べると少し効果が弱いことがあります。それはある種の生薬がエキス剤にする課程で薬効が低下するからだと推測しますが、それによってエキス剤で十分に効果が十分に期待できない場合が出てきます。そこでエキス剤ではちょっとどうかな、という場合は最初からせんじ薬をお勧めする場合もあります。あと、あらかじめ生薬の配合や量が決まっているので、オーダーメードというわけにはいきません。そのため、当院では通常複数のエキス剤を調合してオーダーメードに近い形にしてお出ししています。

次に煎じ薬ですが、メリットは何といっても完全オーダーメードで処方を組めることです。それから先述した一部エキス剤が効きにくい場合でも煎じ薬なら十分に効かせることができる場合があります。非常にいい半面デメリットもあります。まず自宅で作っていただくことになるので手間がかかります。また毎日全く同じ火加減にはできないと思いますので出来上がりにばらつきが生じます。そして味、臭いがダイレクトにきます。それで飲みにくい場合もありますし、また煎じるときの臭いで家族に嫌がられることもあります。専用の煎じ器というのもあってこれを使うとこれらの問題はおおむね解決します。価格がそれなりにしますので長期で煎じ薬を服用する方向けになります。

せんじ薬の簡易版といえるのが”振り出し”といわれるものです。振り出しは刻んだ生薬の代わりに生薬の末を使用します。末はエキスが出やすいので煎じずに紅茶を入れるようにお湯を注ぎ、5分ぐらい蒸らせばエキスが抽出されて完成です。当院ではシナモン生姜茶として桂皮末と生姜末のお茶を時々患者さんにお出ししていますが、飲みやすくて体も結構温まるので好評です。

それから生薬末をそのまま服用する形でもよく使用しています。例えば附子末は代表的なもので一般的にエキス剤に加えてよく用いられますが、当院ではそれ以外のいろいろな生薬末もエキス剤と合わせて使用しています。そうすることでエキス剤がよりオーダーメイドに近くなり、エキス剤だけでは対応できなかったような病状にも対応できることがよくあります。よく初診の患者さんで「これまで・・・のような漢方薬を飲んできたが、効果がなかった」というお話を聞くことがありますが、当院でお出しする漢方は一般的な漢方薬とはいろんな意味でかなり違うと思っているので、まったく気にしません。その理由の一つが生薬末の使用なのです。非常に細かい粉末なので顆粒に比べると少し飲みにくいですが、一般的に効果は顆粒より強いです。

それ以外には錠剤やカプセル剤、丸剤もありますが、当院ではなるべくオーダーメードの漢方になるように患者さんに合わせて細かい割合で調合したりしますのであまりこれらの剤形のものは使用していません。お子さんやどうしても飲めないとおっしゃる患者さんにお出しすることがあります。