メニュー 閉じる

初診を再開しての雑感

11月より初診の受付を再開しました。HPをご覧になった方やすでに通院中の患者さんから自分の家族や知人を診てほしいというご希望をたくさん頂き心苦しく感じていたのですが、ようやく応えられる体制になり、少しほっとしています。再開して感じるのは患者さんに一定の傾向があることです。比較的多いのは➀慢性的な症状をたくさん抱えておられる方、②体重でお悩みの方、➂中国の方です。➀、②はこれまでもありましたが、➂は以前よりわりと多い気がします。勉強会のページに師匠の紹介文を新たに作成したので、ひょっとするとそれをご覧になって受診されたのかもしれません。

中国の患者さんと日本の患者さんでは漢方に対する捉え方にそれなりに違いがあります。一つは処方期間です。日本では一般に漢方は長く飲まないと効かないと思われています。そのため2週間の処方をお出しすると、「2週間で体調に変化が出るんですか?」と聞かれることがよくあります。当院では中国式で処方をお出ししているので2週間もあれば効果が出ることが多いです。これに対して先日来た中国の患者さんに同じく2週間処方しようとしたら「えっ、2週間?長いんじゃないですか」と言われてしまいました。中国では初診時は3,4日だったり、1週間ぐらいのことが少なくないんですよね。そのためこのような反応になります。また処方量についても違います。中国式は日本式より処方量が多いです。したがって日本の患者さんで、特に以前他の日本漢方の先生にかかっていた患者さんだと「えっ、こんなに多いんですか!」と驚かれてしまいます。しかし先ほどの中国の方はエキス剤を中心に処方すると「エキス剤は効果が弱い気がします。煎じ薬がいい」と言いました。私がエキス剤でも効果が強まるように調整していますからと説明しても今ひとつ納得されていない感じでした。中国ではまだエキス剤がそれほど普及していません。また品質のよいエキス剤も少ないのでエキス剤に対する印象がよくないのかもしれません。ちなにみ中国の方が”しっかり効くように出してほしい”と言う場合の煎じ薬の量はだいたい300g/日ぐらいです。日本漢方の先生の処方はおよそ30-50g/日でしょうからかなり違います。

それからもう一つ面白いと思った違いが、自分の体質や体調に関する質問です。日本の患者さんはほぼ例外なく「気、血、水のどれが悪いのでしょうか?」と尋ねてきます。先日質問された患者さんもこのパターンで、私は思わず「うーん」と少し考え込んでしまったんですね。それはなぜかというとその患者さんの一番の問題点は明白で冷え症、中医学的には陽虚という状態だったんです。ただこれを気血水で説明するのが難しい、というかほぼ不可能なので「冷えが問題なんです」とお話しをさせていただきました。これが中国の方だと「私は陰と陽のバランスがおかしいように感じるがどうでしょう」というようなことをおっしゃられる場合があります。これは中医学の考え方に非常に近いので患者さんからこのような発言が出ると思わずうれしくなります。

日本の患者さんは漢方がよく効くと「漢方ってこんなに効くんですか!」と喜んでくれますし、中国の患者さんは上海で診た診察風景が思い出され、また自分が本場で診療しているような気分になって楽しいです。と言うことで国籍関係なく日々楽しく診療させていただいています。